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第604号 2009(H21).01発行

PDF版はこちら 第604号 2009(H21).01発行

農業と科学 平成21年1月

本号の内容

 

 

日本農業の蘇生と肥料

チッソ旭肥料株式会社
取締役 友田 修治

 謹んで新春のお慶びを申し上げます。
 平成21年の年頭に当たり,「農業と科学」をご愛読いただいております皆様のご多幸とご繁栄をお祈り申し上げますとともに,一言ご挨拶を申し上げます。

 日本経済は,米国のサブプライムローン問題に端を発する金融市場の混乱の影響が波及し,また原油・原材料の高騰による企業収益の悪化,海外経済の減速,円高の進行等により景気は後退局面に入った感が一層強まりました。
 そうしたなか,日本の農業は構造的問題による耕作放棄地の増加,農産物市況の低迷,燃料・資材価格の高騰,環境問題に伴う減肥などにより,相変わらず厳しい状況は続いています。
 一方で,BRICs(ブラジル,ロシア,インド,中国)の急速な経済成長や,「バイオエタノール」への用途拡大などにより,穀物価格が急速に値上がりしています。
 日本ではこれまで,高品質な穀物を常に低価格で享受できることが当たり前の様に考えられてきましたが,世界的な穀物自給バランスの変化や国内経済の後退などと相俟って,食料の非常に大きな部分を海外からの供給に頼っている食(=農業)のあり方は,今後大きな転換期に差し掛かると言わざるを得ません。

 今後農業は,「食料自給率向上」・「効率的農業経営」などを目指す方向に転換していくものと考えられます。このような環境の下で,当社は,作物が肥料を必要とするとき必要な肥料量を,かつ追肥作業が省ける効率化を有した機能性肥料のコーティング肥料「LPコート®」,「ロング®」を取り揃えております。さらにLPコート・ロングの技術を発展させ,育苗段階で作物の一生に必要な肥料量を施肥できる局所施肥肥料「苗箱まかせ®」・「育苗まかせ®」を上市し,ご愛顧頂いております。この商品の特長が,日本農業蘇生のためにお役に立てば幸いです。
 当社は,他にも肥効調節型緩効性窒素肥料「ハイパーCDU®」,緩効性窒素肥料「CDU®」,打ち込み型肥料「グリーンパイル®」,硝酸系高度化成肥料「燐硝安加里®」,高性能育苗培土「与作®」等々,収量,品質の安定・向上を目指した商品も取り揃え皆様のご要望にお答えできるよう努力させて頂いております。今後とも一層のご指導ご鞭撻を宜しくお願い申し上げます。

 最後に,本年も「農業と科学」ますます内容の充実を図るよう編集部一同努力してまいりますので,さらなるご愛読を賜りますようにお願い申し上げまして,新年のご挨拶とさせて頂きます。

 

 

イチゴ高設栽培における肥効調節型肥料の利用

宮城県農業・園芸総合研究所
主任研究員 岩崎 泰永

1.はじめに

 イチゴの高設栽培は作業姿勢の改善効果が高いことから全国で導入が進み,470ha(2004年)にまで達している(吉田,2007)。地域別では,九州,四国,東海で多く,とくに多い県は静岡(58.2ha),香川(51.6ha),大分(37.0ha),福岡(37.0ha),愛知(36.0ha)などである。民間企業のほかに,多くの公立試験場がイチゴ高設栽培の開発に参入した結果,培地や栽培槽,養分の供給方法の異なる数多くの栽培システムが発表,導入されている(表1)。

 これらのシステムでは,導入コストの削減を開発目標の一つとして掲げている場合が多く,培地の選定,給液装置や栽培ベッド構造の簡素化など工夫をしていることが特徴である。培地には土壌混合培地(28%),有機培地(43%),無機培地(9%),有機・無機混合培地(20%)などが使われており,有機質材料では,籾殻や樹皮(杉皮など)のように地域の未利用資源を活用している場合も多い。養水分供給方法としては70%弱の生産者が液肥(培養液)を利用しており,30%弱が,肥効調節型肥料(被覆肥料)を利用したり,基肥に肥効調節型肥料,追肥に液肥を利用するタイプとなっている(永岡ら,2003)。

 イチゴ高設栽培では,育苗方法にセルトレイを利用する方法が普及しており,従来の直径9~12cmのポリエチレン製ポットを利用する方法と比べると大きく省力化が進んでいる。この場合には肥効調節型肥料が用いられることが多い。
 本稿では,イチゴ高設栽培における肥効調節型肥料の利用について実験例を交えながら紹介する。

2.セルトレイを利用した育苗における肥効調節型肥料の利用

 セルトレイを利用した育苗では,肥料成分を含む専用の培土を用いる場合もあるが,栽培ベッドと同様な資材をセルトレイに充填し,培養液または肥効調節型肥料を用いて養分供給を行うことが多い。培養液を用いる場合には,葉色や葉の伸長具合など生育に応じて肥料成分の濃度や給液量を調節したり,花芽分化を促進するために培養液から水に切り替えて養分を制限するといったことが容易にできる。しかし,育苗施設に液肥混合機を導入するコストが必要であったり,それを使わない場合には培養液をタンクにその都度調製するには多大な手間がかかるといった問題点がある。一方,肥効調節型肥料を用いる場合には,草勢のコントロールは行いにくいが,水をかけるのみで,液肥混合機が不要で,培養液調製の手間もなく省力的である。この場合には苗の養成期間には十分に養分を供給し,花芽分化を促進する時期には溶出がほぼ終了するような溶出日数をもつ製品を選定し,適切な量を与えることが重要である。

 以下はセルトレイを用いた育苗における肥効調節型肥料の溶出日数と施肥量が苗の生育や花芽分化に及ぼす影響を調べた実験の例を示した。35穴セルトレイ(商品名すくすくトレイ,丸三工業製)にやし殻繊維を主体とした混合培地(やし殻:黒ボク土:鹿沼土=7:2:1 容積比)を充填し,窒素成分で100,150,200mg/株をマイクロロングトータル70日タイプまたは100日タイプとして与えた。また,苦土石灰粉末を培地1Lあたり0.5g混合した。品種は「とちおとめ」と「さちのか」を供試した。2000/7/19に未発根苗を挿し芽して採苗し,適宜潅水して育苗した。この期間は追肥等を行わず,水のみを潅水した。夜冷短日処理(13℃,8時間日長)による花芽分化促進処理を8/18~9/8の期間行い9/8に栽培ベッドに定植した。定植時における葉柄汁の硝酸イオン濃度は「とちおとめ」,「さちのか」ともに70日タイプの100mg区と150mg区では600~700ppmと低い値を示したが, 70日タイプの200mg区,および100日タイプを用いた区では1200~2000ppmと高い値を示した(図1)。

 定植前に花芽分化を検鏡によって調べた結果,「とちおとめ」では70日タイプの100mg区でやや進み,100日タイプの200mg区でやや遅れる傾向がみられたが,「さちのか」では処理区間の差は判然としなかった。頂花房の開花日は窒素施用量の少ない処理区ほど早くなり,開花日に大きな差が生じた。定植直前に行った生育調査では,地上部新鮮重は70日タイプ,100日タイプともに施用量が多い区ほど増加する傾向がみられた。地下部新鮮重は,70日タイプの100mg区,150mg区で増加する傾向がみられたが,「さちのか」の100日タイプを用いた場合のみ200mg区で増加した。

 以上のように,葉柄汁硝酸イオン濃度,開花日および苗の生育状況から判断して,セルトレイ(すくすくトレイ35穴)を用い,やし殻繊維主体の培地を使用する場合には,70日タイプを窒素成分として100~150mg施用することが適当と考えられた。

3.イチゴ高設栽培システムの養分供給方法

 栽培ベッドでの養水分供給方法には,培養液を用いる場合と,肥料成分をあらかじめ培地に混合する方式がある。前者はトマトやバラなどの養液栽培システムで広く利用されている2液混合タイプが主流であるが,システムの低コスト化のため高額な定量ポンプを一台省いた1液混合タイプも使われている。養液土耕用肥料の多くは,カルシウムの含有量が一般的な養液栽培用肥料の半分程度であるので,トマトではカルシウムやマグネシウムの要求量を満たすことはできず,欠乏症状が発生する。イチゴはカルシウムやマグネシウムの要求量が少ないためか,養液土耕用の肥料を用いても十分な生育が得られるとしている。大塚化学からタンクミックスという新しい肥料が発売されている。これは1液混合ながら,一般的な養液栽培用肥料とほぼ同様な組成(図2)であるというものでカルシウム,マグネシウムの欠乏は生じにくい。液肥混合ポンプは給液システムの中では高価な部品であり,1液混合の場合にはそれが1台ですむ。養液土耕から養液栽培へ改修する場合や,養液栽培システムの導入費用全体に占める給液装置のコストが大きくなりがちな小規模なシステムに適する方法である。

 一方,後者としては,肥効調節型肥料を培地にあらかじめ混合し,栽培期間中は水を潅水する方式が使われている。この方式は培養液作成装置(液肥希釈機)を省き,また養液栽培による肥培管理に必要な知識も省略することによって,導入コストを極力抑え,土耕に準じた肥培管理を行いたいという生産現場の要望に応えるものである。養液栽培では,養水分供給の調節による「生育制御」を容易とすることが特徴のひとつであり,目的でもあるが,これらのイチゴ高設栽培システムでは「作業姿勢の改善を目的とした高設化」が最も重要なテーマであり,それをいかに低コストに実現できるかが重要な開発コンセプトとなっている。

 以下にイチゴ高設栽培における肥効調節型肥料の利用についての筆者らの実験例を示した。この実験では生産現場で実際に行われている栽培条件を参考にして培地や肥効調節型肥料の混合割合を設定した。培地としてやし殻繊維主体のもの(やしがら繊維:鹿沼土=7:3)を供試し,株当たりの培地容積は2Lと4Lの場合を設定した。養分供給方法として,培養液(大塚A処方,EC 0.6~0.8dS/m)を1日3回給液する区,(培養液/3回区)と定植前に栽培ベッドに肥効調節型肥料(ロング424 N30kg/10a相当,40日タイプ10%,140日タイプ40%,s180日タイプ50%+苦土石灰61.6kg/10a)を混合し,潅水回数を1日1回とした区(基肥/1回区)と1日3回とした区(基肥/3回区)を設定した。基肥を混合した場合は栽培期間中は水のみを給液した。品種は「女峰」を用いた。発泡スチロール製魚箱に各培地をつめ,タイマー制御のポンプとドリップタイプの潅水チューブ(ストリームライン80,ネタフィム製)で水または培養液を給液した。1日あたりの給液量は100~300ml/株程度とし,全区同じとなるように設定した。2000/7/6に未発根苗を栽培ベッドと同じ培地を詰めたセルトレイに挿し芽し,8/27~9/14の期間,夜冷短日処理(13℃,8時間日長)を行い,9/14栽培ベッドに定植した。1区6株,2反復制とし,着色果実を週3回収穫した。2週に1回程度,排液のECを測定した。保温開始は10月上旬で夜間最低10℃,日中25℃で換気した。

 基肥を用いる場合には給液回数が3回の場合より,1回の場合に収量が高く,また,培地容積は2Lより4Lの場合に収量が高かった(図3)。

 排液のECは培地容積が2Lの場合も4Lの場合も基肥/1回区が基肥/3回区より低くなった(図4)。

 基肥3回区では培地内のECの上昇によって,水分吸収が抑制され,果実収量が低下したと考えられる。すべての試験区で1日あたりの給液量は同じであるが,基肥/1回区では給液1回あたりに給液される水量が多いため排液が多くなる傾向があり,基肥/3回区の場合よりも培地内ECの上昇が抑えられたと思われる。また,培地容積が大きい場合には,培地内でECの低い部分と高い部分が存在し,その結果適度な肥料濃度の部分に根を伸長することによってECの変動や上昇によるストレスを緩和しやすくなり,2Lの場合よりも果実収量が増加したと推察される。一方,培養液を用いる場合には給液回数3回でも,給液する培養液のECは0.6~0.8dS/mとしているため,培地内のECの上昇がみられなかったと考えられる。

 イチゴの高設栽培において,定植前に肥効調節型肥料を混合する方法によって,給液管理によって培養液を用いる場合と同等の果実収量を得ることは可能であるが,根域の容積が株あたり数リットルに限定されてしまうことから,土耕とは肥培管理が大きく異なることを意識する必要があり,排液の量とECを定期的に調査しながら給液する量を調整することが重要である。

4.おわりに

 以上,イチゴ高設栽培における肥効調節型肥料の利用について実験の例を紹介した。秋に花芽分化して休眠に入り,一定量以上の低温に遭遇することによって休眠が打破され,春に開花結実するのが,本来のイチゴのライフサイクルである。日長条件や温度条件を電照や保温によって巧妙に制御して秋から春まで連続的に開花結実させる技術によって促成栽培は成り立っている。また,促成栽培では開花結実が開始して着果負担が増加するに従って,日射量,気温が低下してゆき生育には不適な環境となる。草勢,着果負担や休眠を考慮した肥培管理が求められる。肥効調節型肥料の種類,量および混合割合については,本実験の場合よりさらに適切なものがあると思われる。これらを明らかにすることによって複雑な肥培管理をより省力的に行える可能性がある。土耕の場合には小菅らの報告がある(小菅ら,2001,小菅ら,2001)ので参考にされたい。

引用文献・参考文献

1)吉田裕一.2007.
  わが国におけるイチゴ高設栽培に関する研究動向.「東アジアにおけるイチゴ生産と研究の動向と展望」講演要旨集.P15-18

2)金岡ら.2003.
  イチゴ高設栽培・都道府県別普及状況.農業技術体系野菜編.第3巻.追録第28号

3)小菅佐代子ほか.2001.
  肥効調節型窒素肥料を利用したイチゴの育苗ポット全量施肥栽培.日本土壌肥料学会誌.72(1):88-91

4)小菅佐代子ほか.2001.
  肥効調節型肥料の施肥法が促成イチゴの生育収量に及ぼす影響.園芸学雑誌.70(5):616-621

 

 

促成実エンドウのエコロングを用いた効率的施肥

和歌山県農林水産総合技術センター 農業試験場
環境部長 森下 年起

1 はじめに

 和歌山県の特産野菜であるエンドウ類は,連作障害のみられる代表的な品目である。日高地域の産地では,太陽熱土壌消毒や施肥量を増やすことで連作障害を軽減している。そのため,土壌養分の過剰集積による生育障害や硝酸態窒素の地下水汚染等の問題が指摘されている。そこで,エコロングを利用した実エンドウの効率的施肥技術について検討した。

2 促成エンドウ栽培ハウスの土壌実態調査

 日高郡日高川町,印南町等の促成ウスイエンドウ及びキヌサヤエンドウ連作栽培ハウス121ほ場の土壌調査を2001年5月に行った(表1)。

 調査土壌は,灰色低地土(善通寺統,清武統),黄色土(矢田統),褐色森林土(貝原統,石浜統)であった。土壌断面及び理化学性調査と同時に生育状況について,「良」,「普通」,「不良」に圃場を分類した。
 EC,無機態窒素含量は,エンドウ生育の「良」と「不良」で有意差があり,生育「不良」で高くなっていた。NO3-Nで最高43.1mg/100gの地点もみられた。pH,有効態リン酸,交換性塩基は生育の「良」と「不良」で有意差がみられなかった。有効態リン酸は生育の良悪にかかわらず平均200mg/100g以上と集積していた。
 以上の結果,日高地域のエンドウのハウス栽培跡地土壌において,硝酸態窒素含量は,エンドウ生育の優劣で有意差がみられ,過剰施肥による硝酸態窒素の集積が生育不良の要因の一つと考えられた。

3 促成実エンドウにおける工コロングの施肥量と生育,収量

 連作障害軽減のために行われる多施肥が生育不良の要因の一つと考えられたため,エコロングの100日溶出タイプを用いて,表2に示す施肥設計で施肥改善試験を行った。試験は,紀北地域に位置する紀の川市の農業試験場内において実施した。基肥は2003年9月15日,慣行区の追肥は10月23日,2004年1月23日,2月26日に行った。品種は紀の輝を用いて,播種を2003年9月17日に行い,収穫期は2004年1月8日~4月22日であった。栽培は,加温ハウス(最低5℃設定)で行った。

 収量は,連作慣行区に比べて,ロングN25区,ロングN20化成N5区が同等,ロングN20区が6%少なくなった。連作無窒素区の収量は,連作慣行区の64%であったが,初作無窒素区は連作慣行区と同等であった。連作における窒素含有率は,無窒素区を除き,各区とも茎葉が2.5%前後,さやが3.5%前後と大きな差はなかった。窒素吸収量も,無窒素区を除き,50.1~52.0g/㎡と大きな差はなかった(表3)。

 以上,エコロング100日溶出タイプN25kg/10aの基肥全量施用またはN20kg/10aと化成N5kg/10aの基肥全量施用によって,慣行の化成N30kg/10aと同程度の収量が得られた。

4 促成実エンドウにおけるエコロングを用いた効率的施肥(現地実証)

 紀中地域に位置する日高郡みなべ町の促成エンドウ連作ハウスにおいて表4に示す施肥設計で試験を行った。試験は実エンドウの主産地である紀中地域に位置するみなべ町で実施した。基肥は,2004年9月9日(太陽熱消毒後),慣行区の追肥は,12月10日,1月15日,2月15日に行った。品種は,きしゅううすいを用いて,播種を2004年9月23日に行い,収穫期は12月20日~4月25日であった。農試場内試験と同様に,加温ハウス(最低5℃設定)で栽培した。

 エコロングを用いたロング区の初期生育は慣行区と同等であった(写真1)。また,収穫期の生育も大きな差はみられなかった(写真2)。

 収量について,エコロング100日タイプN20kg/10aと化成N5kg/10aを基肥全量施肥とした場合,慣行施肥N35.5kg/10a(基肥+追肥3回)に比べて,2~3月の収量が多く,4月が少なくなった。合計収量,粗収益は,エコロング全量基肥が慣行と同等であった(表5)。施肥量は,現地試験を実施した農家に比べて約3割,地域の一般
的な施肥量(30kgN/10a)に比べて約2割削減できた。

 土壌中無機態窒素及び茎葉の窒素含有率は,エコロング全量基肥が慣行施肥に比べて,生育前半が高く,生育後半が低くなった。窒素吸収量は,エコロング全量基肥が約30kg/10aと慣行施肥に比べて1割程度少なくなった(表6)。

 促成実エンドウ栽培における生育期間中の地温積算値は,みなべ町において3,4 60℃であった。エコロング100日タイプの溶出率を推定したところ,収穫終了時において80~90%であった(図1)。

 エコロング全量基肥の肥料費は,現地試験を実施した農家慣行に比べて約3割(データ省略),慣行モデル指標に比べて約1割少なくなった。また,施肥の労働時間は,追肥が省略できるため,慣行に比べて半分となる(表7)。

5 おわりに

 連作実エンドウにおいてエコロング100日タイプと速効性化成肥料を用いて全量基肥施用することで,慣行と同等の収量,粗収益が得られることがわかった。窒素施肥量は2~3割,肥料費は1~3割削減できるとともに追肥を省略でき省力化にもつながる非常に優れた施肥体系であると考えられる。
 産地では太陽熱土壌消毒が実施されており,エコロングの溶出特性から施肥は太陽熱消毒後に行う必要がある。しかし,最近,土壌消毒効果を継続維持するために,作畝後に太陽熱消毒を行い,そのままの状態で播種を行う作業体系が増加してきている。エコロングを用いる本施肥法では,この作業体系に対応できないため,何らかの工夫が必要であり今後の課題である。

 

 

初期溶出抑制型被覆肥料(スーパーエコロング)を
用いたビンカの合理的施肥の検討

神奈川県農業技術センター
主任研究員 美濃口 薫

1.はじめに

 ガーデニングの普及により,これまでシクラメンやその他鉢物の補完作物であった苗物が経営の主なウエイトを占めるようになってきた。
 ここでは,夏の花壇苗物として主力作目であるビンカの品質向上と施肥の省力化を目的として試験を実施した。
 ビンカの品質向上を図るためには生育初期から苗の徒長を防ぐことが重要である。そこで,初期溶出抑制型被覆肥料(スーパーエコロング)の施用により草姿や開花に及ぼす影響を調査するとともに,鉢用土に予め肥料を混和するタイプの被覆肥料を用いることで施肥作業の省力化を図り合理的な施肥技術を明らかにした。

2.試験方法と結果の概要

(1)被覆肥料の種類と生育(2006年)

 シグモイド型(初期溶出抑制型)被覆肥料のスーパーエコロングとリニア型被覆肥料のエコロングによるビンカの生育について調査を行う。

1)試験方法

 ア 試験施設 ガラス温室(165㎡)
 イ 供試材料 ビンカ「ストロベリークーラー」,「ペパーミントクーラー」
 ウ 試験期間 2006年5月~9月
 エ 試験構成

 オ 耕種概要
   は種:5月8日セルトレイ(200穴)播き
   は種用土:メトロミックス350
   鉢替え(3.5号):6月14日
   施肥時期:鉢替え時(6月14日)に土壌混和
   鉢替え用土:赤土+腐葉土+ビート+パーライト=5+2.5+2+0.5
   用土量:350ml/鉢
   温度管理:ガラス温室内 最低温度15℃
   調査項目:生育調査(節数,株張り,草丈),開花調査,生育中の土壌溶液中硝酸イオン濃度,培土の化学性

2)結果の概要

 ○スーパーエコロング区はエコロング区に比べて草丈,節数,および株長径とも小さく推移した(表1および写真1)。

 ○エコロング区に比べスーパーエコロング区では10日程度開花開始が遅れた(図2)。これは,初期生育が抑えられたことによるものと推察された。

 ○排出溶液測定法による土壌溶液中の硝酸イオン濃度もエコロング区は初期の段階から高い値を示しているが,スーパーエコロング区は低い値を示し,鉢替え3週間くらいから多少高くなるが極端な変化は見られなかった。

(2)被覆肥料の種類及び施肥量と生育(2007年)

 前年度の試験では,スーパーエコロングにより草丈は抑えられたが,初期生育の遅れから開花も遅れてしまった。そこで今回は,初期に液肥による追肥を行う区,肥料の量を2倍に増量した区及び被覆肥料を混合した区を設け,植物体の調査を実施した。

1)試験方法

 ア 試験施設 ガラス温室(165㎡)
 イ 供試材料 ビンカ「ストロベリークーラー」,「ペパーミントクーラー」
 ウ 試験期間 2007年3月~8月
 エ 試験構成

 オ 耕種概要
   は種:3月7日 セルトレイ(200穴)播き
   は種用土:メトロミックス350
   鉢替え(3.5号):4月23日
   施肥時期:鉢替え時(4月23日)に土壌混和
   培土:赤土+腐葉土+ビート+パーライト=5+2.5+2+0.5
   用土量:350ml/鉢
   温度管理:ガラス温室内 最低温度15℃
   調査項目:生育調査(葉枚数,株張り,草丈),開花調査

2)結果の概要

 ○各品種とも施肥量2g/L区が施肥量4g/L区にくらべ草丈,株長径ともに小さく推移した。特に草丈おいては,試験区②(スーパーエコロング2g/L)区が小さくなった。また,元肥の施用量が同量の区においては,肥料の違いによる草丈等の差は見られなかった(図3~写真3)。

 ○開花日については,ペパーミントクーラーの試験区②に多少のばらつきが見られたが,試験区間の差は見られなかった(表2)。

 ○施肥量2g/L区は,市場出荷が終了すると思われる6月下旬頃から葉色が薄くなり始め,7月下旬には黄色が目立つようになったが,4g/L区では葉色が多少薄くなる程度であった(表3)。

 ○生育初期に液肥による追肥を2回行うことで初期溶出抑制型被覆肥料単用の試験区②,試験区④の生育が抑えられることはなかった。

3.まとめ

 スーパーエコロングによりポット内への生育初期の肥料分の溶出が抑えられ,草丈の徒長は抑えられるが,初期生育の遅延により開花も遅れる場合がある。しかし,これは生育初期に液肥の追肥を行うことで改善することができる。
 また,スーパーエコロングの初期溶出を抑える点を補うために初期に溶出するタイプの肥料を混合して施用することで,生育初期の液肥による追肥は省略することができると考えられるが,その割合については検討が必要である。
 一方,施肥量に関しては,市場出荷のみを目的として生産する場合は2g/L程度で十分と考えられるが,直売等販売期間が長くなる場合は,それ以上の施用が望ましい。
 最後に,生育のばらつきを防止するためは,十分に用土と混和する必要がある。

4.おわりに

 スーパーエコロングはIB化成等に比べると高価であるが,プロミック等の錠剤肥料よりも安価であり,予め用土と混合するため,一つ一つのポットに置く手間を考慮すると十分に省力化が期待できる。また,底面給水等の潅水方法と組み合わせることでさらに省力化が図れると考えられる。